生物機能・化学反応工学研究室
ナノ秒の超高速分子反応を光で捉える!
高橋 憲司(教授)
本研究室では、イオン液体を用いたバイオマスの処理やレーザーによる各種分光法やなど、幅広い研究に取り組んでいます。
- バイオマスリファイナリー
- 化石燃料から脱却して,植物などから石油から作られる製品と同様の化学製品を作りだすバイオリファイナリーという研究を進めています。バイオリファイナリーのコンセプトでは,バイオマス成分から生物的あるいは化学的に生成可能な基幹化学品となる化合物を絞り込み,その化合物から有用な化学製品などを生産します。その基幹化学品としては,コハク酸,レブリン酸,イタコン酸などが上げられていますが,バイオエタノールは最大の基幹化学品です。 木材などのリグノセルロース系バイオマスからエタノールを作るためには,(1)バイオマス前処理,(2)セルロースをブドウ糖に変える糖化反応,(3)そのブドウ糖を発酵させてエタノールにする発酵,というプロセスを経て作られます。これら行程のうち,もっとも困難で課題が多いのがバイオマス前処理行程です。植物細胞壁はセルロースやリグニンという化合物でできています。ここで問題となるのが細胞壁中のセルロースやリグニンが複雑に絡み合った構造およびセルロースの強固な結晶構造です。このような構造は生物的・化学的な反応を著しく妨げるという問題があります。そのため、リグノセルロース系バイオマスを効率的に糖化するには、セルロース繊維を覆っているリグニン構造の緩和、セルロースやヘミセルロースの非結晶化が進むような糖化前処理が必要となります。私たちは,イオン液体という特殊な溶媒を用いて,前処理を行う新しい技術を開発しています。 また,木材からバイオエタノールを生産すると,木材を構成しているリグニンというフェノール系化学物質が,大量に出てきます。現在,このリグニンは燃料などとして燃焼されていますが,フェノール樹脂などの原料として利用できる可能性があります。そこで,リグニンをOHラジカルなどを用いて低分子化する方法を開発してきました。リグニンを芳香族資源として利用するためには,さらなる反応制御が必要です。そこで,リグニンモデル物質を用いて,OHラジカルとの反応生成物をガスクロマトグラフィ質量分析計を用いて詳細に検討しています。また,分子量分布の変化,融点の測定などを行い,樹脂原料として必要な情報を得ています。
- パルスレーザーを使った人工光合成システムの構築と測定
- 再生可能エネルギーとして,太陽光の有効利用はもっとも大切な課題です。究極の太陽光利用は人工光合成ですが,実現には多くの課題が残されています。当研究室では,新たな太陽電池や光触媒へ応用することを可能とするための基礎的な光化学反応の研究を進めています。光反応の効率を高めたり、新しい機能を発現させたりするには、その反応機構を解明することが重要ですが、過渡吸収分光や時間分解蛍光測定など,パルスレーザーを分子に照射して分子を反応性の高い状態=活性種にし、その光吸収量を測定することで活性種の寿命や反応機構を調べています。(反応時間はナノ秒=10−9からフェムト秒=10−15!)。レーザー照射のタイミングを調整することで、より活性の高い状態を作ったり、どのような反応性を持つのかを調べることができます。
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生物のシステムを応用してガン治療や環境保全
仁宮 一章(准教授)
本研究室は、生物が持つ多様な機能を人類の福祉に役立てる工学に取り組んでいます。主なテクノロジーは、新たな生体分子や微生物の作製、生体分子と無機材料の融合による機能性生体材料の作製、超音波化学作用です。
- ガン治療へ貢献
- 遺伝子組換えによりガン細胞を特異的に認識する生体分子を作り、抗ガン剤を結合して体内に送り込む、新しいドラッグデリバリーシステムを開発する。ガン細胞だけを狙うため副作用の小さい治療を可能にする。 また、新しい抗体と二酸化チタンのナノ粒子を結合させて体内へ送り込み、超音波でガン細胞をたたくシステムを開発する。
- バイオマス利用
- 改良微生物を使って廃材などからエタノールを取り出す技術を開発する。
- 環境汚染物質の除去
- 光触媒として知られる二酸化チタンと超音波の組合せによる殺菌プロセスを開発する。
生物の能力や仕組みをテクノロジーに活かす
滝口 昇(准教授)
本研究室では、①生物自体の応用と②生物の仕組みを応用の2種を行っています。研究テーマは複数あり、その一部を紹介します。
- ①生物自体の応用
- ①生物自体の応用として、微生物によるバイオ燃料プロセスの開発 食用廃油をバイオディーゼル燃料として再利用する過程では、副生成物としてグリセロールが生じるが、現在、廃棄されている。そこで、微生物を利用してグリセロールをバイオ燃料として再利用する方法を研究している。
- ②生物の仕組みを応用
- ②生物の仕組みの応用として、マウス匂い識別行動の制御系への応用 マウスは周囲の匂いから好物の匂いを選択してその匂いの元へ動く。その匂いの識別・行動のメカニズムを解明して制御システムに転用し、情報処理において重要なものを選択して臨機応変に対処するシステムを開発する。
環境中の物質移動を解析し、環境保全に役立てる
本研究質では、環境中の物質移動に関するテーマを設け,自然界や様々な産業における物質の循環を制御する諸技術について研究を行っています。
以下の3つのテーマも環境スケールは違いますが環境中の物質に着目しております。
- 西オーストラリア植林地での炭素循環解析
- 地球温暖化の要因のひとつとされている炭酸ガスを吸収させるため,食用生産と競合しない西オーストラリア乾燥地に植林を行なうとともに、乾燥地全体での炭素循環の動態解析を行なっています。
- 日本海における汚染物質の動態解析
- 東アジア地域の経済発展により,日本海に大量に放出されている恐れのある化学物質の実態把握と動態解析を行なっています。
- 土壌中の汚染物質の拡散防止
- 重金属で汚染された土壌から重金属が溶け出して汚染が広がるのを防ぐため、天然鉱物系吸着剤を用いた処理(不溶化処理)について研究を進めています。
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