生態学研究室

自然界は地球環境の未来へ重要な示唆を与える

 生態学とは生物と環境の関係を扱う学問であり、環境保全や農林業にも関連しています。その視点は個体レベル、個体群レベル、群集(ある区域にいる生物全体)レベル、生態系(生物群集と環境全体)レベル、地球レベルのように多様で、手法の基本は野外調査です。主たる研究テーマを紹介します。

  • 里山の自然の長期観察
  • 国土の4割を占める里山には絶滅危惧種の5割が生息しており、生物多様性を守る上で重要である。現代の人間社会と自然との共存、ならびに持続的資源利用のモデルケースでもあるが、日本の里山は危機的状況にある。
    本研究では主調査地を近在の里山ゾーンとし、動物、昆虫、植物、キノコ等に関する生物多様性のインベントリー(種類目録や分布図など)、フェノロジー(動植物の季節的な現象)、年次変動、生物間相互関係の長期モニタリングを行っている。また、棚田復元などを実施し、それが生物多様性におよぼす影響も調べている。以上を通して環日本海の里山の現況と問題を明らかにし、里山生態系を健全に保つ土地利用と保全管理法の提言をめざす。
  • 共生と生物群集構造(都野展子)

  • 都野 展子(准教授)
  •  生物学において、社会に最も大きな影響を及ぼした学説は何かというと、多くの人はダーウィンによる自然淘汰であると考えるのではないでしょうか。生態学においても、生物間相互作用の中で、競争、それに伴う自然淘汰あるいはニッチの変化、は重要な研究課題です。生物進化を推進してきた大きな力は、自然淘汰であり、あるいは絶え間なく遺伝的変異を蓄積していく分子進化の中立説、であると説く生態学のテキストが多いです。しかし、この二つの重要な学説に加え、共生作用も種多様性の創生に重要な役割りを果たしてきたことを誰も否めないでしょう。生態学は数量を扱うに適し、質的変化については、不得手のようで、競争に比べ、共生が生物群集構造にどう影響するかといった研究は途上です。ただ共生が生物多様性を支えていることは、地球上最大の生物多様性の宝庫である熱帯雨林が共生の森であったという事実から示唆されます。競争関係にあるはずの生物がどのように互いの立ち居地を見つけていくのかに関心があります。
  • アリと鳥の生態学(大河原恭祐)

  • 大河原 恭祐(准教授)
     主にアリ類と鳥類を対象とした行動生態学と群集生態学分野に関する研究を行っている。アリの社会と繁殖様式は他の生物に類を見ないほど複雑で特殊な性質を持っている。本研究室では、特に母親は娘を、父親は息子をそれぞれ単為生殖によって生産する、“性”を機能的に失ってしまった不思議なアリの研究を行っている。
     またアリ類はその特殊な生活史上、多くの植物と多様な共生関係を構築している。アリによる種子散布や果実捕食はそうした関係の1つであるが、その共生関係の仕組みと進化要因の解明を目的とした研究も行っている。さらにそれらの関係には果実食性の鳥類の行動も関係しているケースがあり、熱帯林などで鳥類の種子散布も絡んだ3者間の複雑な相互関係についての調査も行っている。また鳥類については北陸地方の湖沼で越冬するガン・カモ類の保護に関する研究にも取り組んでいる。
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